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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第5章 従者と執事見習い〜従者の恋〜
「愛人…?
そんな…」
月城の形の良い眉が解せぬというように顰められた。

「…不潔だって思った?
君の愛する梨央様のお父様を誘惑した悪い奴…て思ってる?」
露悪的に嗤うと、月城はむっとしたように首を振る。
「そんなこと思っていません!
狭霧さんは凄く良い方ですから。
…それは…悪ふざけはなさるし、冗談ばかりだけれど、本当はとてもお優しい方だと分かっています。
旦那様に忠誠心を持っていらっしゃるし、梨央様のことだって大切にしてくださっています!
私には解ります!
そうではなく、愛人…で良いんですか…て…」
眼鏡の奥の切れ長の瞳が、痛ましいように細められた。

「月城くん。
君は優しいねえ…」
月城の肩を抱く。
「…俺はさ、言われているんだよ。
旦那様に。
…『私は君を愛してやれない。
君に何の約束もしてやれない』…てね」

月城の美しい瞳に哀しみの色が宿る。
「そんな…」
「いいんだよ。
俺はそれでもいい…って言ったんだ。
愛も約束も要らない。
俺が旦那様を愛しているから、それでいい…ってさ」
「…狭霧さん…」

狭霧は手を挙げる。
「旦那様を冷たいひとだと思わないでくれよ。
…旦那様は梨央様だけを愛している。
…もっと言えば…誰か忘れられないひとがいて、そのひとに愛を捧げている」
「…それは…」

あっさりと狭霧は首を振る。
「さあね。誰かは俺にも解らない。
でも、そんなことは別にいいんだ。
構わない。
俺が旦那様を愛している。
…それで充分なんだから」
「…狭霧さん…」

狭霧はジャケットの胸ポケットから薄荷煙草を取り出し、火を点ける。
「…昨日、縣様のお屋敷でさ。
俺の亡くなった恋人の母親にばったり会ってさ。
案の定、凄く罵倒されたんだよ。
…まあ当然だよ。俺はそれだけのことをしたんだから。
彼女が俺を罵って少しでも気が晴れるならいくらでも罵ってくれて構わない。
俺はどんな覚悟だって出来てる」

…でも…。

狭霧は昨日の北白川伯爵の毅然とした姿を思い浮かべる。




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