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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第5章 従者と執事見習い〜従者の恋〜
「…旦那様が俺のことを庇って下さったんだ。
大勢の来客の前で堂々と、臆することなく。
…本当は俺なんかを庇ったら、痛くもない腹を探られる…。
そんなことに関わらなくていいのに。
毅然と俺を庇って、子爵夫人を告訴するとまで言い切ってくれたんだ。
…そんな貴族が何処にいる?
いないよ。
その時思ったんだ。
俺はこのひとを誰よりも敬愛して…そして誰よりも愛している。
そう確信したんだ」
「…狭霧さん…」
月城の涼やかな目元が薄らと赤く染まっている。
月城にも大切な主人…梨央がいる。
だから、狭霧の気持ちは痛いほどよく分かるに違いない。
…唯一の主人に仕えることが出来る幸福も…そして、寂しさも…。
狭霧は自分に宣言するように続ける。
「だから俺は生涯死ぬまで旦那様に仕えるつもりだ。
旦那様が幸せになるなら、なんでもする。
旦那様のためなら、命も惜しくはない」
…ふと、我に還る。
ガラにもないことを月城の前で言ってしまった…。
熱く語りすぎた自分が少し恥ずかしくもなり…
「…だから、よろしくな。
将来の執事さん」
狭霧をぐいと引き寄せ、そのなめらかで引き締まった頬にわざと音を立ててキスをした。
「ああ〜ッ!
な、な、な、何するんですかッ!
もうッ!」
真っ赤になって目を白黒させる月城に狭霧はにっこりと笑う。
「ほんと可愛いなあ。月城くん。
…梨央様は諦めて、俺に乗り換えない?」
月城は憤然とした表情でぶんぶんと首を振った。
「全くもう!やっぱり狭霧さんはふざけたひとだ!
しんみりして損しましたよ!
大学に遅刻するので!失礼しますッ!」
「行ってこい!
しっかり勉強して偉い執事になって、俺を養ってくれ!」
キッチンガーデンを駆け出してゆく月城に、そう声を掛けて見送ったのだった。
大勢の来客の前で堂々と、臆することなく。
…本当は俺なんかを庇ったら、痛くもない腹を探られる…。
そんなことに関わらなくていいのに。
毅然と俺を庇って、子爵夫人を告訴するとまで言い切ってくれたんだ。
…そんな貴族が何処にいる?
いないよ。
その時思ったんだ。
俺はこのひとを誰よりも敬愛して…そして誰よりも愛している。
そう確信したんだ」
「…狭霧さん…」
月城の涼やかな目元が薄らと赤く染まっている。
月城にも大切な主人…梨央がいる。
だから、狭霧の気持ちは痛いほどよく分かるに違いない。
…唯一の主人に仕えることが出来る幸福も…そして、寂しさも…。
狭霧は自分に宣言するように続ける。
「だから俺は生涯死ぬまで旦那様に仕えるつもりだ。
旦那様が幸せになるなら、なんでもする。
旦那様のためなら、命も惜しくはない」
…ふと、我に還る。
ガラにもないことを月城の前で言ってしまった…。
熱く語りすぎた自分が少し恥ずかしくもなり…
「…だから、よろしくな。
将来の執事さん」
狭霧をぐいと引き寄せ、そのなめらかで引き締まった頬にわざと音を立ててキスをした。
「ああ〜ッ!
な、な、な、何するんですかッ!
もうッ!」
真っ赤になって目を白黒させる月城に狭霧はにっこりと笑う。
「ほんと可愛いなあ。月城くん。
…梨央様は諦めて、俺に乗り換えない?」
月城は憤然とした表情でぶんぶんと首を振った。
「全くもう!やっぱり狭霧さんはふざけたひとだ!
しんみりして損しましたよ!
大学に遅刻するので!失礼しますッ!」
「行ってこい!
しっかり勉強して偉い執事になって、俺を養ってくれ!」
キッチンガーデンを駆け出してゆく月城に、そう声を掛けて見送ったのだった。