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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第5章 従者と執事見習い〜従者の恋〜
「ちょ…狭霧さん…!」
慌てる月城が可愛くて、思わず吹き出す。
「冗談だよ。冗談。
…それにしても礼也様は、本当にお優しい方なんだな。
普通、父親の愛人の子どもなんてわざわざ手元に引き取ったりしないよ。
だって自分の母親を裏切った相手の子どもだろう?
いくら異母兄弟だからって…。
引き取って家族として迎えてきちんと教育して…。
そんな親切な気持ちになるのかな…」
…狭霧にも異母兄弟はいる。
千雪…ユキは後妻のさな絵の子どもだ。
けれど、さな絵は正式な妻だったし、生まれた時から一緒に暮らしていたユキは本当の弟だと思えたし、可愛かった。
さな絵とは折り合いが良くなかったが、ユキは誰よりも大切で可愛い存在だった。

…礼也様も、そんなふうに弟君を可愛がっていらっしゃるのかな…。

「…ええ、そうですね。
礼也様は誰に対しても分け隔てなく慈悲深くお優しいのです。
ですから、暁様にもそうなのだと思います。
暁様には一流の家庭教師を付けられ、名門星南学院の編入試験を受けられ、見事合格されたそうです。
それまで殆ど学校には行かれていなかったそうですから、礼也様のご尽力は元より、暁様の努力と聡明さも素晴らしいのだと思います」

珍しく多弁に生き生きと語る月城を、狭霧は意外に思った。
「…へえ…。
月城くん、何だかすごく暁様を褒めるね。
まだ会ってもいないのに。
美少年って聞いて期待してる?」

月城は形の良い眉を顰める。
「何でですか。違いますよ。
…私も暁様みたいに貧しい家の生まれでしたから…。
他人事とは思えないのです。
暁様くらいの弟が、故郷の能登にいますし…。
…だから暁様は貧しい中、よく耐え忍んで生き延びていらしたなあ…と思うのです」
しみじみとした口調には、静かな優しさが漂っていた。

「…ですから、礼也様のようにお優しくて頼もしい兄上に引き取られて、本当に良かったと僭越ながら思ったのです」

「…なるほど…ね…」
…弟…か…。

狭霧はふと、千雪のことを思い出した。
手紙のやりとりはしているが、まだ帰国してから会えてはいない。
…醜聞に塗れた自分が会いに行ったら、店に迷惑が掛かる。
だから、会いに行くつもりはなかった。

…けれど…

千雪の少女めいた可憐な面影が甦る。

…ユキは元気かな…。

時折、こんなふうに無性に気に掛かるのだった。






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