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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
「…暁。ありがとう。
私はお前の兄になれて嬉しいよ」
礼也は、可愛くて仕方がないと言ったふうに暁の艶やかな黒髪を撫でた。
それは、月城が今まで見たことがない礼也の素直で素朴な行動に見えた。
礼也はこの屋敷では、常にマナーの教本のような振る舞いをしていた。
常に冷静沈着で、偏った行動や言動など絶対にしない。

…このように昼食のテーブルで、もう中学生にもなっている弟に如何にも溺愛している風情を見せるなど、初めてであった。 
けれどそれは、礼也の株を上げこそすれ、決して彼の評価を下げることはない人情を感じさせる温かな振る舞いであったのだ。

礼也は慈愛に満ちた眼差しで暁を見ながらしみじみと語った。
「…暁は私が引き取るまで、本当に辛い思いをしておりました。
もっと早くこの子の存在に気づいて、引き取ってあげたら良かったと後悔の気持ちで一杯です。
…ですからその分、暁には幸せな人生を歩んで欲しいのです。
誰よりも美しく輝かしく幸福な人生を…」
「…兄さん…」
暁の黒眼勝ちの美しい瞳は、感涙を湛えて礼也を見上げる。

「なんと麗しい兄弟愛だろうね」
伯爵は感心しながら唸る。
「礼也くんの熱い想いに応えて、暁くんは名門星南学院を受験して、見事合格したのだね。
立派なものだ。
暁くんの努力もだが、ここまで導いた礼也くんの愛情と情熱も素晴らしい」

伯爵の賞賛の嵐に、礼也が照れたようにこめかみを掻く。
「それほどのことは…。
私は仕事で忙しく、実際暁の受験勉強を熱心に見てくれていたのは私の親友の大紋でしたし…」

その名前に、伯爵は合点がいったように形の良い眉を跳ね上げた。
「…大紋春馬くんだね。
新進気鋭の弁護士として法曹界で名を馳せているようだ。
…ああ、そうだ。
彼とは以前、倫敦の夜会で会ったことがある。
洗練された美男子の上、理知的でユーモアも教養もある素晴らしい青年だったな。
…ダンスも上手くてね、令嬢たちが彼と踊りたがってちょっとした騒ぎになっていたよ。
…礼也くんは実に良い友を持っているのだな」

「恐縮です。伯爵」
礼也は親友を褒められたことへの感謝の礼を述べた。

…暁は、どこか謎めいた微笑を浮かべ、そっとシードルのグラスに口唇をつけた。
…一瞬、どきりとさせるような匂いやかな色香に満ちたその所作が、なぜか月城の胸にいつまでも残ったのだった。



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