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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
「…手を…ですか?」
暁が長く濃い睫毛を瞬かせる。
「はい」
おずおずと差し出された白く華奢な手を、恭しく、そっと握りしめる。
暁の手はひんやりと冷たかった。その手に温もりを与えるように優しく握りしめる。
「…私の手は、どんな感触ですか?」
微かに照れたように、暁は美しい眼元を細める。
「暖かいです。
大きくて…すごく暖かい…」

少し強く力を込めて、握りしめる。
「あっ…」
「これでもまだ夢だと思われますか?」

暁が嬉しそうに小さく首を振る。
「…いいえ…」
…そして、
「もっと強く握ってください」
可愛らしくねだられて、月城はぎゅっと力を込めた。

「痛っ…」
小さく悲鳴を上げられ、慌てて力を緩める。
「申し訳ありません…!
力を入れすぎました!」

詫びる月城に暁は笑い出した。
それは年相応の無邪気な笑いだった。
「大丈夫です。
…嬉しいです。
本当に現実だと、これではっきり分かりました」
「…良かった…」
ほっと息を吐くと、暁と眼が合った。
二人は思わず同時に吹き出した。
「…なんだか…可笑しいですね」
「…はい…。
私も…つい子どもっぽいことをしてしまいました」

照れ笑いする月城を暁は眩しげに見上げる。
「…月城さんて、お優しいけれど…ちょっと意外なひとですね…」
「そ、そうですか…」

なぜだか妙に気恥ずかしくて、それを誤魔化すように二人はいつまでもくすくすと笑い続けた。



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