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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
暁はおずおずとブランコに腰掛ける。
月城は背後に周り、蔓薔薇が螺旋状に巻き付いたブランコの鎖に暁の手を掛けさせる。
ひんやりとした華奢な手に触れ、思わずどきどきする。
その感情を表には出さず、落ち着いて告げる。
「しっかりお手を握りしめていらしてくださいね。
薔薇の棘はご心配なく。
ピエール・ドゥ・ロンサールは比較的棘が少ない花なのです。
さらに庭師が剪定して、棘はすべて取ってありますので」
「はい」
「…では最初はお背中を押させていただきますね。
失礼いたします」
ほっそりとした背中を、そっと押す。
…暁の身体は驚くほどに軽く、すぐにブランコは大きく揺れ始めた。

「…わ…あ…!」
暁の口から小さな歓声が上がる。

「怖くありませんか?」
「大丈夫です…!
…ブランコ…て、こんなに高くまで上がるんですね…!」
弾み出す声は、まるで子どものように無邪気だ。
鎖が大きく揺れるたびに、薔薇の花弁がフラワーシャワーのように舞い上がり、暁に降り注ぐ。
ピエール・ドゥ・ロンサールは豪華な大輪のカップ咲きの薔薇だ。
幾重にも重なる花弁と中心にピンクがのる優雅な色調がとても美しい。
その花弁がひらひらと暁に纏わりつくように舞うさまは、さながら耽美的な絵画のようだった。

「…あ…薔薇の花が…」
暁も花弁に気づいたようだ。

…きれい…。
うっとりとした声が、薔薇の香気に満ちた空気に混じり合う。

「薔薇のブランコです。
梨央様がお気に入りで、常に美しい蔓薔薇を誘引しております」
「素敵ですね…。
…まるで夢の中にいるみたいに綺麗です…」
暁が空を見上げながら、呟いた。

…太陽が煌めく春の空に、ふわりと舞い上がる…
暁様は、さながら薔薇の精だ…。
月城も、思わず見惚れる。

「…月城さん…」
薔薇のブランコに乗りながら、暁が振り返る。
柔らかな花弁が、ひらひらと舞い落ちる。

「…すごく、楽しいです…。
…ありがとうございます…」

…その透明で無垢で…けれどどこか儚げな美しい微笑みは、月城の胸にいつまでも、いつまでも残ることになるのだ…。



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