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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
「…いやあ…暁様、本当に綺麗な男の子だったね」

縣男爵家の兄弟を乗せた黒塗りのロールスロイスが遠ざかるのを車寄せから並んで見送りながら、狭霧が屈託なく告げた。
「綺麗な上になんかこう…凄い色気があったね。
まだ十四歳だろう?
静かな妖気…ていうかなんというか…。
あれは将来が楽しみだ」
「…狭霧さん。
お言葉が過ぎますよ」
やんわり嗜めると、狭霧はにやりと笑いながらしなだれかかってきた。
「褒めているんだよ。
頗るつきの美少年だってさ。
礼也様があれだけ可愛がるのもなんだか分かるね。
弟だから…というだけじゃない。
暁様の美しさに心を奪われているように見えた。
もちろん健全な意味で…だけれどね。
人間は美しいものに惹かれずにはいられないのさ」
「…狭霧さん…」
ため息をつきながら、月城は先程、別れ際に暁と交わした会話を思い出していた。


『今日はすごく楽しかったです。
綺麗なブランコに乗れて…。
…僕があんまり楽しそうだったのか、兄さんがうちにもブランコを作ろうか…て。
僕はもう中学生なのに』
帰り際、礼也が伯爵と挨拶を交わしているのを見遣りながら、はにかんだように暁が告げた。

『…礼也様は本当に暁様をお可愛がっていらっしゃるのですね』
思わず笑みを漏らすと、暁は長く濃い睫毛を瞬かせ、月城を見上げた。
『…また、月城さんにお会いできますか?』

月城は一瞬眼を見張り、曖昧に微笑んだ。
『当家にいらしていただけましたら、いつでも…』

暁の綺麗な眉が寄せられた。
『こちらに伺わないとお会いできないのですか?
月城さんがうちに来られることはないのですか?』

『私は執事見習いの身です。今はまだ下僕ですし…。
従者ではありませんので、旦那様のご命令がない限り、私が縣様のお屋敷に伺うことはないでしょう』
『…そう…ですか…』
悲しげに眼を伏せる。
『…寂しいです…。
せっかく親しくお話しできるひとができたのに…』
…その様は如何にも頼りなげで儚げで、庇護欲を掻き立てるに充分なものだった。

『…暁様…』
気がつくと、月城は口走っていた。
『…暁様は調布の乗馬倶楽部に通い始められたそうですね』
『ええ…最近…』
『…私も旦那様の馬のお世話をしに週末通っております。
…いつかお会いできたら光栄です』
『…月城さん…!』

暁の美しい瞳が、嬉しげに煌めいたのだった。

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