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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
「…月城さん…。
いらしていたのですね…」
柔らかなアルトの声が月城の鼓膜を震わせた。

月城ははっと振り返る。
馬房の前に、人影があった。

「…暁様…」
…逆光に、少年の華奢なシルエットが浮かび上がる。
思わず眼を細めた。

「お久しぶりでございます。
暁様にはご機嫌麗しく、何よりでございます」
恭しく挨拶をし、一礼する。
…頭を上げ、暁の姿に思わず見惚れる。

…暁は白絹の立襟のシャツにふわりとリボンタイを結んでいた。
ほっそりとした美しい腰のラインのシルエットに沿う黒のシングルのジャケットには金鈕が輝き、同色の天鵞絨の乗馬ズボンは、その形の良い細く長い脚を強調するかのようだった。
磨き上げられた黒革の乗馬ブーツは、暁を歳より大人びて見せていた。
形の良い小さな頭には黒いシルクハットが被られていて、正装をしていることが見て取れた。
…この数ヶ月で、背も伸び、益々美しく優美に成長している様に、月城は感動すら覚える。

暁は嬉しげに微笑んだ。
その美貌は、さながら穢れのない白い蓮の花のようだった。

「暫くお会いできなかったから、どうしているのかと気になっていました。
…月城さんもお元気そうで何よりです」

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