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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
「暁様でしたらご立派にセレモニーを盛り立てられることでしょう」
「…そうかな…。
僕はまだたくさんの人前に出るのが苦手なんです」
暁はシルクハットをさらりと脱ぎながら、伏目勝ちに呟いた。
…秋の透明な陽の光に、やや長めな艶やかな髪が琥珀色に輝く。
本当に細部まで美しい少年だと、月城は改めて見惚れる。

「…粗相はしないか、言葉遣いはおかしくないか、マナー違反はしていないか…。
何より、兄さんの名誉を傷つけてはいないか…。
それが心配で…」
「…暁様…」
健気な少年の言葉に胸が熱くなる。

「…父親の愛人の子どもを引き取った…て、きっと密かに揶揄されているでしょうから…。
兄さんは完璧な素晴らしいひとなのに。
僕のことでつまらないケチを付けたくないんです。
だから、人前に出る時は緊張するんです」

「…暁様…」
月城はゆっくりと暁の前に歩み寄る。
「貴方様もまた、礼也様と同様に素晴らしい方ですよ」

「…月城さん…」
眩しげに自分を見上げる少年に、優しく微笑む。
そうして、心からの本心を語り掛ける。
「暁様はお美しくお優しくご聡明で慎ましやかで繊細で…魅力に溢れた方です。
私はこう見えても、沢山のやんごとない方々を拝見してまいりました。
その方々の中でも、暁様は特別にお美しく優れた資質をお持ちです。
私が保証するのです。
どうぞ自信をお持ちになってください。
暁様は礼也様の何よりのご自慢の大切な弟君様なのですから」


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