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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
「春馬さん…!」
暁が声を上げた。

…振り返る先に佇むのは、すらりと長身な身体に最新流行の洒落た乗馬服を纏った若い男性だ。
理知的で紳士然とした美丈夫な青年だった。
…その知的勝った端正な風貌には、どこか見覚えがあった。

月城はすぐ様向き直り、お辞儀をする。
こちらから声を掛けられる身分ではないので、黙礼だけだ。

月城に気づいた青年は、ああ…と涼やかな眼を見張り、笑顔を湛えて近づいてきた。

「…君は確か…北白川伯爵家の…」
「恐れ入ります。
下僕の月城と申します」
「大紋春馬だ。よろしく。
…北白川伯爵には昨年のガーデンパーティーにお招きいただいた。
礼也と一緒にね。
…君のことはよく覚えているよ。
目が醒めるような美しく品格のある下僕がいるな…と驚いたからね」
青年…大紋春馬は人当たりの良い性格らしく、朗らかに月城に握手を求めてくる。
さすがは社交家で人気者の縣礼也の友人だ。

「大紋様。
お久しぶりでございます。
私などのことを覚えていただき、恐悦至極に存じます」
恭しく礼を返す。

大紋は暁を振り返り、如何にも愛おしげな眼差しで尋ねた。
「…暁。
彼とは親しいの?」






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