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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
「…兄さんとお屋敷にお招きいただいた時に、月城さんにはご親切にしていただいたのです」
…少しぎこちなく答える暁に、大紋は意外そうに瞬きをした。
「…そう。
人見知りの暁が随分楽しそうに話していたから、珍しいな…と思ってね」
大紋はごく自然な仕種で暁の華奢な肩を抱いた。
「暁はなかなか他人に慣れるのが苦手でね。
北白川伯爵家のように大貴族のお屋敷の訪問は緊張したと思う。
僕からも礼を言うよ。
優しくしてくれて、ありがとう」
大紋の言葉に、暁が苦笑する。
「春馬さんたら…。
いつまでも子ども扱いしないでください。
…春馬さんは兄の親友で、僕の家庭教師をしてくださったんです。
星南学院に編入するために特訓してくださって…。
春馬さんは星南のOGでしたから…」
「左様でしたか」
…如何にも富裕な青年の経歴だと月城は思った。
大紋家は貴族ではないが、代々法曹界の出身でかなりの資産家でもあると、昨年のガーデンパーティの際、来客の婦人たちが囁いていた。
…容姿が良く知的職業に就いていて、しかも資産家の青年に、年頃の娘を嫁がせたい婦人は沢山いるのだ。

大紋がさり気なく月城に名刺を渡した。
「僕は弁護士をやっている。
最近、親父の法律事務所のイソ弁から独立して個人事務所を開いたんだ。
…今は礼也の会社の顧問弁護士をして食べさせてもらっている。
駆け出しの弁護士だよ」
屈託なく笑うその貌は、嫌味のない自信と知性に溢れていた。
…恐らく仕事も順風満帆なのだろう。

「…ありがたく頂戴いたします」
月城は名刺を押し戴いた。

「何か困ったことがあったらいつでも相談に来てくれ。
…君は礼也のフィアンセの未来の執事殿だ。
だから相談料は無料だよ」

冗談めかした言葉に、暁の美しい貌が俄かに曇った。
そうして、先程までの柔らかな表情と打って変わった取り澄ましたような笑みを浮かべた。
「…僕はもう馬場に行きます。
月城さん、会えて嬉しかったです。
それではどうかお元気で。
ご機嫌よう」

さっさと踵を返す暁に、大紋が慌てて追いかける。
「暁…!待ってくれ。
僕も行くよ。
練習は君一人ではまだ危ない」
「放っておいてください。
子ども扱いしないでって言ってるでしょう」
…刺々した暁の声が、次第に遠ざかって行った。



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