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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
…暁様があんなふうに苛立たれるなんて…珍しいな…。
遠ざかる二人の姿を見ながら、月城は思った。
…さっきまで、にこにことされていたのに。
何故急に…
と、思いを巡らせ、ひとつのことに思い当たる。

…大紋様が礼也様と梨央様のことに触れられてからだ…。

暁様は礼也様と梨央様の事実上の婚約を快く思われていないのだろうか…。
そういえば、以前屋敷に来られた時も、礼也様が梨央様のことを話されると寂しげなお貌をされていた。

…暁様にとって、礼也様はたったおひとりのお兄様だ。
そのお兄様の婚約については、やはり寂しさが先に立つのだろう。

月城も、暁の気持ちはよく分かる。
自分も、梨央の婚約者には礼也が相応しいと、納得している。
けれど、やはり心の何処に寂しさや侘びしさがあることを否定はできない。 
暁は、尚更だろう。
礼也は暁にとって特別なひとなのだ。
…恐らく、月城が察する以上に…。
最愛の兄を、梨央に取られてしまうような気持ちに、いきなり襲われたのだろう。

…けれど…。

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