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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第2章 狭霧の告白
「待った?ごめんね、狭霧。
経済学のゼミが長引いちゃって…」
店に入るや否や、和彦は狭霧を見つけるとテーブルまで颯爽と歩み寄る。
そうして、爽やかな笑顔で詫びた。

すらりとした長身の若い青年が入ってきたのを、近くに座っていた女学生が目敏く見つけ、こそこそと向いの女学生に耳打ちする。
二人は眼を輝かせながら、和彦をちらちら見つめ始めた。

和彦は洒落たデザインのカシミアのセーターに趣味の良いネイビーブルーのダッフルコートを羽織っている。
首元に無造作に巻きつけられた赤と濃紺の格子模様のマフラーはイタリー製だ。
髪型も爽やかな若々しいカットが施されていた。
以前の和彦は上質な洋服を着てはいたが、いかんせん堅実なデザインで、お洒落とは言い難いものだった。
髪型も清潔感はあるが地味だった。
そこで狭霧は自分の行きつけの舶来のテーラーに連れてゆき、服の趣味を変えさせた。
そして横浜の若いフランス人が経営する美容室で髪型も整えさせた。
地味ながら元々貌立ちは整っているので、和彦は見る見る内に垢抜けていった。

…俺の教育でここまで育ったか…。
狭霧は感慨深くもあり、少しだけ戸惑いもある。

思いの外、和彦の見た目の良さは周りに伝わり、こんな風に女学生や若いマダムたちはうっとりとした眼差しを向けるようになったのだ。
そうすると、和彦も自信が持てるようになったのか、若い女性たちとも明るく話せるようになってきたらしい。
今では、山科家に届く和彦宛のお茶会や夜会の招待状も目に見えて増えてきた…そうだ。

…確かに…良い男になったよな…。
朗らかな笑顔が自然と浮かべられるようになっていたし、恥ずかしがり屋で口ベタだったのも、段々と直って来た。
今では、男女問わず自然に和やかに話せる様になったのだ。

…でも…

「…別に。俺も今来たから」
つんと澄まして、珈琲をがぶりと飲む。

つれなくしたのに和彦はにこにこしたままだ。
「狭霧。狭霧は今日も綺麗だね。
さっき窓の外から君の姿が見えて、思わず見惚れてしまったよ。
…僕の狭霧はこんなに綺麗なひとなんだ…て、感動してしまった」
テーブルに着くなり、臆面もなく称賛の嵐だ…。

…正直、ここまで変わるとは思わなかった。






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