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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
…そういえば…。

もやもやとした不可思議な感情から気持ちを逸らすために、月城は別のことを考える。

脳裏には、先ほどの爽やかな若き弁護士の姿が浮かんだ。

…大紋春馬様…か。

貴族ではないが、資産家で弁護士で見栄えが良く、縣礼也の親友だという申し分のない貴公子だ。

…大紋様と暁様は、どういったご関係なのだろう…。
疑問…というより、少し不思議に感じたことだったのだ。

以前、暁の家庭教師をしていた…だけとは思えない親密さが二人の間には漂っていたのだ。
暁をとても心配し、気にかけている…だけではない…。
そう、礼也にはない濃厚な熱っぽい情愛のような眼差しを、彼はしていたのだ。
暁も彼には随分、気安いあしらいをしていた。


…もしや、大紋様は暁様を…。

と考え、慌てて首を振る。

…そんな…下衆の勘繰りをするなんて。
暁様はまだ十四歳じゃないか。
いや、その前に二人は男性同士だ。

…それに…

月城は、ふっと自嘲的に微笑う。

…私には関係のないことだ。

暁様は、他家の御子息様。
男爵家の方。
私には、縁もゆかりもない方だ。

そう呟くと、何故だか体温がぐっと下がったような気がした。

「…っ…」

…ジークフリートが月城に頭突きをして来た。
退屈してしまったのだろう。

月城はにっこりと笑い、ジークフリートの白い鼻面を撫でてやる。

「よしよし。
お前は旦那様がお留守でつまらないんだな。
早駆けに連れて行ってやるよ。
…もうすぐ冬だ。
雪が降れば外遊には連れ出してやれないからな」

話しかけると、ジークフリートは嬉しげに嘶いた。




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