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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
「では、私にしっかりとお掴まりください。
怖いようでしたらお眼を閉じていらしてくださいね」
「うん…」
鎧を軽く蹴り、ジークフリートを促す。
ジークフリートは全く怯むことなく、駆け出した。
吊り橋ゆえに、馬上の人間も波立つように揺れる。

「…あ…っ…!」
暁が月城の胸に貌を埋めるようにしがみついてくる。
白くか細い手が、必死に月城の胸を掴む。
その強さから、暁の緊張が伝わってくる。
月城は、その華奢な身体を強く抱き留めた。
…蓮の花のようなあえかな薫りが、ふわりと纏わりつく。

「大丈夫です。
そのままじっとなさっていてください。
ジークフリートは勇敢で冷静な馬です。
お信じください」
「うん…!信じる。
ジークフリートも…月城も…!」
暁の熱い吐息が胸に沁み入る。
いつもより遥かに早い胸の鼓動が、暁に伝わらないといい…。
そう思いながら、ジークフリートを操る。
その耳元に低く命じた。
「ジークフリート。いい子だ。一気に駆けろ」
ジークフリートは、そのまま軽やかに吊り橋を駆け抜けた。
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