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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
吊り橋を渡り終え、山道の手前で暁が振り返り、息をつく。
「…あんなに細い橋を渡ったんだね…」

「怖かったですか?
最初からご無理をさせてしまいましたね」
労ると暁は首を振り、少年らしく紅潮した美しい貌で月城を見上げた。
「ううん。全然!
すごく…わくわくした!
こんなこと、初めて。
兄さんも春馬さんも少しでも危ないことは絶対にやらせてくれないから」

一瞬、月城は考える。
「…春馬さん…。
…大紋様ですね」
「そう。
…心配性なんだ、すごく。
兄さんに輪をかけて…。
まるで、僕をどこかに閉じ込めておきたいみたいに…」
苦笑しながらも、その口調はどこか恥じらいのような…ふわりとした色香が滲んでいた。

…微かにちりりと痛みのような感覚を覚え、月城は慌ててそれを振り払う。

「そうですか…」
ややぎこちなく、小さく相槌を打ち、
「では参りましょう。
日暮れまでには、山腹に着きたいので…」
と、ジークフリートの歩を急がせたのだった。


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