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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
「暁様。中にお入りください。
今、暖炉の火を入れます」
バンガローに入るなり素早く薪をくべ、火を点けながら暁に声を掛ける。

「…ありがとう…。
素敵なバンガローだね」
暁が辺りを見渡しながら、感心したように声を漏らす。

…通常バンガローは単なる簡素な山小屋なのだが、山で狩りもする伯爵は日暮れ後、寝泊まりすることも度々あった。
そこで、小振りなコテージのように一通りの生活は出来る設計にしていたのだ。

こじんまりとした素朴な造りだが隣室には寝室もあり、簡単な食事を作れるキッチンも備えていた。
暖炉のある部屋は獲物でもある熊の毛皮の敷物があり、壁には伯爵のお気に入りのベラスケスの絵画まで飾ってある。
…中世の欧州貴族が狩猟の合間に寛ぐような、無骨ながらも洒落た大人の遊び心のある意匠が凝らされている。
広さもたっぷりあり、狩猟仲間と語り合い、飲み明かすのには相応しい居心地の良い空間なのであった。


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