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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
ワインが煮立つ前に取り出し、熱くないように手巾を巻いて暁に差し出す。

「火傷なさらないように、気をつけてお召し上がりください」
「ありがとう、月城」
一口呑むと、暁は濃く長い睫毛を瞬き眼を見張った。
「美味しい…!
甘くて良い薫りがする!」

月城も思わず微笑みを漏らす。
「…それはようございました。
狭霧さんに教わったのです。
お口に合いまして、光栄です」

暁は少し考えて、思いついたように尋ねる。
「狭霧さん…て、あの凄く綺麗な従者さん?」
「はい。旦那様の従者です。
狭霧さんには色々なことを教わりました。
…旦那様に随行する際のマナー、立居振る舞いや会話。
美味しいホットワインの作り方。
それから馬の扱い…」

…それから…

月城の脳裏に、あの夜の出来事が甦る。

『…月城くん。
…大人の夜のマナーも、そろそろ覚えても良い頃だよ…』

…密やかな甘い囁きと、狭霧のつけているベルガモットの薫りのトワレ…。

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