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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
「旦那様を愛しているのではないのですか?」
狭霧が身分差を超えて、北白川伯爵を愛していることはよく知っている。
それなのになぜ、こんな不埒なことを…。

狭霧が長く艶やかな髪を掻き上げながら、ふわりと微笑った。
「愛しているよ。誰よりも。
…だからこそ、旦那様のお役に立つことは何でもする。
俺の身体が役に立つなら、一夜の情事くらいなんてことないさ」

月明かりに照らされた狭霧の美貌はぞっとするほどに美麗で妖しい。
ベルガモットの薫りが甘く切なく薫る。
その妖艶な魔の魅力に絡め取られるまいと、月城は表情を引き締める。

「…意味が…分かりません。
どうして貴族の方々と…そうなることが旦那様のお役に立つのですか?」


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