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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
「…旦那様は大変な人気者だ。
男女問わずアバンチュールのお誘いがある。
旦那様は独身だけれど、それを全て受けるわけにはいかない。
特に日本では、不倫は表沙汰になれば大変なスキャンダルだ。
一方的に旦那様に執着なさるご婦人や紳士もおられる。
家名や旦那様のお名前に傷をつけるような火種からは、できる限り旦那様を遠ざけねばならない」

「…つまり…」
月城は表情を硬くした。
「旦那様の代わりに、狭霧さんは貴族の殿方やご婦人の夜のお相手をなさっているのですか?」
「そうだよ。至極簡単なことだ」

月城は低く叫ぶ。
「納得できません。
第一、旦那様はご存知なのですか?
ご存知で狭霧さんにそんなことをさせていらっしゃるのですか?
そんなの、おかしいです。
それじゃまるで、旦那様は狭霧さんを愛してな…」
…言いかけて、はっと口を噤む月城に、少しも傷ついた様子もなく、狭霧は美しい瞳を細めてさもないように微笑った。
「そうだよ。愛していないよ。俺のことなんて」




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