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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
外の様子を見る為に立ち上がった月城は、窓の外を一瞥し、眉を顰めた。
辺りは真っ白い雪原と化していた。
すっかり暮れた墨色の空からは、間断なく白い雪が降り注ぐ。
その勢いは先程と比べ物にならぬほど、激しさを増していた。

「…困ったことになりました」
ため息混じりに呟く月城の背後に、暁が近づく。
「どうしたの?」
「…ご覧の通り、吹雪です。
日も暮れてしまったので、これではもうあの吊り橋は危険すぎて渡れません」
「…じゃあ…」
「…今晩はこちらで夜明かしするしかありません」
「夜明かし?
ここに泊まるってこと?」 
暁の黒眼勝ちの美しい瞳が大きく見開かれる。

「はい。
誠に申し訳ありません。
こんなことに暁様を巻き込んでしまって…。
私の判断が甘かったのです。
お詫びのしようもございません」
深々と頭を下げる。
月城は激しく後悔する。
なぜ天候不順な今日、大切な縣男爵の令息を遠乗りに連れ出してしまったのだろう。
今頃は暁が戻らないことに乗馬倶楽部の馬丁たちが気づき出し、縣家に連絡を入れている頃だろう。
礼也はことの他、暁を可愛がっている。
大騒ぎになっているかもしれない。



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