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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
月城は匂うように麗しい少年の貌からぎこちなく視線を逸らす。
「…けれど、縣様のお屋敷では今、大変な騒ぎになっているかもしれません。
暁様がお帰りにならないのですから…」
迎えの運転手が暁の不在に気づき、慌てて執事に伝えていることだろう。
もしかしたら、既に礼也の耳に入っているかもしれない。
暁を溺愛している礼也は、警察に連絡しているかもしれない。

すると暁はあっさりと首を振った。
「大丈夫だよ。
僕は今日、帰りに学院の先輩のお宅に行くつもりだったから迎えは来ないんだ。
その先輩は大らかなひとだから、多分僕が行かなくても屋敷に連絡したりしない。
僕がアルフレッドに会いにゆく日はいきなり馬房に泊まることもよくあるから、皆んなすぐには心配はしないよ。
…それに、兄さんは今日から飯塚の炭鉱に出張なんだ。
暫くは戻らない。
だから、兄さんの耳に入ることはない」

月城は安堵の息を吐く。
「…そうですか。
それは少し安心いたしました。
縣様始め、縣家の皆様にご心配をお掛けするのは申し訳ないですので。
…明日は安全な道で廻り道をして山を下りましょう。
なるべく早くお屋敷までお送りし、私からお詫び申し上げます」


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