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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
二杯目のホットワインを口にすると、暁がぽつりと尋ねた。
「…君の方こそ、北白川のお屋敷では今頃心配しているんじゃないか?
…特に、梨央様が…」

月城は薪を焚べ直しながら、静かに答える。
「私は今日は休日をいただいておりますので…。
明日午後までに戻れば大丈夫なのです」

「お休みなのにわざわざ伯爵様の馬のお世話に?
真面目だね、月城」
ふふ…と笑われ、月城も思わず微笑みを漏らす。
「…真面目…というか、私は馬が好きなんです。
ジークフリートは私によく懐いてくれていて特に可愛くて。
最近は梨央様も乗馬をされるようになりましたので、尚更よく見てやらないとと思いまして」

「…梨央様…」
暁の美麗な横貌に、寂し気な色が微かに帯びる。

少しの沈黙のち、その言葉は聞こえた。

「…梨央様は…本当に兄さんとご結婚なさるのかな…」

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