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第6章 従者と執事見習い　〜執事見習いの恋〜

「…キス…」
一瞬、何のことか分からなかった。
…暁様が礼也様にキス…？
何をおっしゃっているのだろうか？
なぜ、そんなことを？
礼也様と暁様は、そんな不道徳な関係なのか？
いや、まさか…。
驚いて声も出せない月城に、暁は薄く微笑んだ。

「…僕が一方的にキスしたんだよ。
兄さんは何も知らない。
僕がキスしたことも。
…いや、僕が兄さんを愛していることも…」
「…暁様…」

暁はゆっくりと再び月城の膝に寝転んだ。
寝転んだまま、月城を長く濃い睫毛越しに見上げる。
拒否されるのではないかと恐れるような、気弱げな表情だ。
…そして、それは幼な子が母親に縋るような、甘えるような、どこか稚い眼差しだった。

「…軽蔑する？僕のこと」
消え入りそうな声だ。

月城はきっぱりと首を振る。
「いいえ」
暁は大きな黒々とした美しい瞳を潤ませ、泣き笑いのような表情をした。

「…兄さんは何も知らないんだ。
僕が勝手に兄さんを好きになって、キスをした…。
…軽井沢の別荘で…うたた寝している兄さんに…そっとキスをしたんだ…」

…暁が、秘密の告白を始めたのだ…。