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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第6章 従者と執事見習い 〜執事見習いの恋〜
…ラテン語の勉強をしたのち、礼也にピアノを弾いてくれるようせがんだ。
暁は礼也が弾くピアノも大好きなのだ。

「…さて、何を弾こうかな。
何がいい?暁」

南向きの広々とした音楽室のグランドピアノの前に座り、礼也は鍵盤に指を滑らす。
スタンウェイのピアノから、美しい音色が流れ出す。

暁は遠慮勝ちに、礼也の隣の椅子に座る。
そうして、礼也の手をおずおずと盗み見る。

…よく手入れされた美しい指は長く、爪はぴかぴかに磨き上げられている。
掌が大きく、ワンオクターブ以上は余裕で届く手だ。

暁は礼也の手が大好きだ。
いや、礼也の身体はすべて好きだ。
その端正な貌だけでなく、どこもかしこも美しく雄々しく気高い存在だと思う。
礼也は暁にとって、一日中見つめても見飽きない…見れば見るほどうっとりと見惚れてしまうような…尊く眩しすぎる存在なのだった。

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