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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第2章 狭霧の告白
「…狭霧…」
和彦は切なげに眼を瞬き、やがて静かに微笑った。
「…それでいいよ…。充分だ。
ありがとう、狭霧。
…僕が君を愛しているから、いいんだ」
「…和彦…俺はさ…」
言いかける口唇を、その温かな唇で塞がれる。
「…いいんだ。無理しないで。
…僕の方から君を好きになったんだ。
だから、今、こうして僕と居てくれて本当に感謝している。
ありがとう、狭霧…」
優しい言葉、優しい抱擁…。
…不意に胸が締め付けられる。
この優しい恋人を、自分は静かに傷つけているのだと思い知らされるからだ。

…でも、狭霧…。
と、和彦が狭霧の額に自分のそれをこつんと押し当てる。

「…いつか、いつの日か、愛していると言って…」

和彦の優しい瞳は、穏やかに微笑んでいた。

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