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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第2章 狭霧の告白
…けれど、二人のひそやな恋は長くは続かなかった。
武蔵野の別邸での二人の情事を、和彦に密かに恋をしていた通いのメイドが目撃し、和彦の父親…山科子爵に告発したからだ。
メイドはかねてからずっと和彦に片想いをしていた。
思い詰めて告白したこともある。
けれど、和彦に丁重に断られ、それでも諦めきれずに和彦の世話をしたいと志願して別邸に通っていたのだ。
メイドは狭霧に対する嫉妬から逆上し、山科子爵に訴えた。
『泉様が和彦坊ちゃまを誘惑したのです。
悪の道に引き摺り込んだのはあの方です。
旦那様、どうか和彦坊ちゃまをあの方の魔の手からお守り下さい』
…と。
山科子爵は烈火の如く怒り、すぐ様二人を引き離した。
和彦は武蔵野の別邸に閉じこめられた。
山科子爵は狭霧の父親に面会に赴き、ことの重大さを訴え、二度と二人が会うことがないよう厳しい処遇をするように強く求めた。
そして
『貴方の御子息が息子を誑かしたのです。
息子は成績優秀で品行方正な青年でした。
御子息が息子を誘惑し、悪癖を教え込んだのです。
場合によっては御子息を司法に訴えることもできるのですよ』
と、釘を刺したのだ。
よりによって男…しかも貴族の子息と、恋愛関係にあると聞いた狭霧の父親は慌てふためき、狭霧を離れに幽閉した。
相手は身分の高い貴族の御曹司だ。
将来もある。
その相手を狭霧が誘惑したとあっては、こちらの部が悪すぎる。
店の外聞にも関わる。
こんな醜聞が世間に流布したら、店は一巻の終わりだ。
父親は、鬼の形相で狭霧に言い渡した。
『お前は来月、上海の私の弟の元に送る。
親子の縁を切る代わりにお前名義の株を全てやる。
それで商売するなり好きにしろ。
しかし二度と日本の土は踏ません。
お前のしでかしたことはこの家や店を破滅に導く大罪なのだぞ。
そんな分別もない愚かな奴だったとはな。
もうほとほと愛想が尽きた。
金輪際、私に貌を見せるな』
武蔵野の別邸での二人の情事を、和彦に密かに恋をしていた通いのメイドが目撃し、和彦の父親…山科子爵に告発したからだ。
メイドはかねてからずっと和彦に片想いをしていた。
思い詰めて告白したこともある。
けれど、和彦に丁重に断られ、それでも諦めきれずに和彦の世話をしたいと志願して別邸に通っていたのだ。
メイドは狭霧に対する嫉妬から逆上し、山科子爵に訴えた。
『泉様が和彦坊ちゃまを誘惑したのです。
悪の道に引き摺り込んだのはあの方です。
旦那様、どうか和彦坊ちゃまをあの方の魔の手からお守り下さい』
…と。
山科子爵は烈火の如く怒り、すぐ様二人を引き離した。
和彦は武蔵野の別邸に閉じこめられた。
山科子爵は狭霧の父親に面会に赴き、ことの重大さを訴え、二度と二人が会うことがないよう厳しい処遇をするように強く求めた。
そして
『貴方の御子息が息子を誑かしたのです。
息子は成績優秀で品行方正な青年でした。
御子息が息子を誘惑し、悪癖を教え込んだのです。
場合によっては御子息を司法に訴えることもできるのですよ』
と、釘を刺したのだ。
よりによって男…しかも貴族の子息と、恋愛関係にあると聞いた狭霧の父親は慌てふためき、狭霧を離れに幽閉した。
相手は身分の高い貴族の御曹司だ。
将来もある。
その相手を狭霧が誘惑したとあっては、こちらの部が悪すぎる。
店の外聞にも関わる。
こんな醜聞が世間に流布したら、店は一巻の終わりだ。
父親は、鬼の形相で狭霧に言い渡した。
『お前は来月、上海の私の弟の元に送る。
親子の縁を切る代わりにお前名義の株を全てやる。
それで商売するなり好きにしろ。
しかし二度と日本の土は踏ません。
お前のしでかしたことはこの家や店を破滅に導く大罪なのだぞ。
そんな分別もない愚かな奴だったとはな。
もうほとほと愛想が尽きた。
金輪際、私に貌を見せるな』