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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第2章 狭霧の告白
和彦が慌てて抱擁を解き、挨拶をするために男の方へ歩み寄る。
礼儀正しく手を差し出す。
『初めまして。山科和彦です。
私の方からご挨拶に伺うべきでした。
失礼いたしました。
この度は、縣様には大変お世話になりました。
心より感謝いたします』
折目正しく和彦が差し出した手を、男…縣礼也は人好きする微笑みを浮かべて握りしめた。
『初めまして。
山科さんは帝大生だそうですね。私の後輩だ。
私は二年前に卒業しました。
…そして、貴方は…』
礼也は狭霧に向き直ると、驚いたように眼を見張った。

『…なんと美しい…!
月の女神のディアーナですら貴方の前では恥ずかしがって雲隠れしてしまいそうだ。
…ああ、失礼。
これは女性を賞賛する時の言葉でしたね』

洒脱なユーモアに思わず狭霧は笑ってしまう。

『初めまして。
泉狭霧です。
この度は本当にありがとうございました』

礼也は狭霧の手を強く握りしめ、にっこりと笑った。
『狭霧さんは、おいくつですか?』
『もうすぐ二十歳になります』
『…そうですか…。
おふたりは同い年なのですね』
『はい…』
…この縣礼也という男は、自分たちのことをどう思っているのだろう狭霧はふと考えた。
ふたりの関係性は、どうやら知っているようだった。
同性愛者の駆け落ちを手助けするなど、随分酔狂なひとだとも言える。
…もしかして、単なる好奇心や野次馬根性で関わったのだろうかと、意地悪な見方をしていると、礼也が相変わらず狭霧の美貌に感心したように眼を輝かせ、微笑んだ。

『…私は弟が欲しかったのですよ。
貴方のように美しい弟が…。
もし居たら、どんなに可愛がったでしょう』
『…はあ…』
…いや、単に少し変わったひとなのかもしれない。

『…ああ、でも私の父はかなりの艶福家ですからね。
その内、腹違いの美しい弟がどこからか現れるかも知れない。
それに期待することにしましょう』
『…縣様は面白い方ですね』
『ありがとう』
やや皮肉めいて言ったのに、礼也は快活に笑った。
…そうして、ふたりを見ながら温かい口調で続けた。

『…人生は何が起こるか判らない。
…なんでも楽しんだ方が勝ちですよ』
ふたりへのエールのような言葉に、狭霧ははっとなった。

…このひとは、もしかしたら物凄く器の大きなひとなのかもしれない…。
狭霧はそう思い直した。



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