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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第2章 狭霧の告白
二人はモンマルトルの街、ルピック通りの外れにある小さな下宿に住まいを決めた。
…モンマルトルは芸術家や芸術家の卵が多く住まう街だからだ。
ルノワール、ゴッホ、ゴーギャン、ユトリロ…。
ここで育ち、有名になった芸術家を挙げればキリがない。
学費や生活費として和彦や狭霧は多額な金銭を双方の母親から受け取ってはいたが、この好意にどっぷりと甘えるわけにはいかなかった。
なぜなら、二人は日本に帰るつもりはなかったからだ。

『出来るだけ節約して、少しずつでもお金は返そう。
学校に慣れてきたら、働こう』
二人でそう約束をしていたのだ。

早速、巴里6区・サンジェルマン・デ・プレにあるエコール・デ・ボザールの編入試験を受けた。
ここはフランス唯一の国立美術学校だ。
二人に同情した深圳画伯が推薦状を持たせてくれたとはいえ、この名門美術学校は難関と言われていた。
ことに東洋人の入学は未だ狭き門であった。
けれど、二人とも見事合格を果たした。
合格通知を受け取り、和彦と狭霧は抱き合って喜んだ。

…その夜、下宿の部屋で二人は安いワインで乾杯した。
ランプの灯りがひとつだけの、仄暗い部屋だ。
窓は小さな裏窓があるだけ。
家具は粗末なテーブルと椅子、それから古びた寝台。
小さな暖炉だけは赤々と燃えていた。
ひたすらに、幸せだった。

暖炉の前に座り、取り留めもなく語り合う。
『僕は別に画家として成功しなくてもいい。
二人でこつこつ絵を描いて、この巴里で仲良く暮らしてゆこう。
…いつまでも、一緒にだ…』
優しい和彦の瞳が、狭霧を見つめる。
少し照れくさい。
本当は、嬉しい。
ここには邪魔するものがいない。
二人きりの世界だ。

…けれど素直じゃない狭霧は、ちょっと冷めたふうに笑った。
『俺は和彦には有名な画家になって欲しいな。
…というか、大勢の人間に和彦の絵を見てもらいたい。
お前の絵は素晴らしい。
たくさん良い絵を描け。
俺が売り込んでやる』

和彦が狭霧の髪に手を伸ばす。
懇願するように、囁かれる。
『…僕は君さえ傍にいてくれたら、何も要らない。
地位も、お金も、名誉も…』

狭霧は苦笑する。
『もっと欲張りになれよ。
…言われなくても俺はずっとお前の傍にい…』

…最後の言葉は、ワインの薫りがする和彦の熱い口づけで甘く溶かされた…。



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