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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第2章 狭霧の告白
…月日は瞬く間に過ぎていった。
美術学校は刺激的かつ新しい発見の連続の場所であった。
西洋絵画の素晴らしさを日々体感し、学ぶ毎日だった。
エコール・デ・ボザールの近くにはルーブル美術館やオルセー美術館があった。
アルバイト代を貯め、二人は週に一度、朝から閉館まで食い入るように様々な美術館の名画を観て回った。
学校が終わるとアルバイトをし、フランス語を生で必死に学んだ。
毎日の生活にただひたすら慣れるのに必死だった。
時間が魔法のように過ぎていく。
様々な事柄が、目まぐるしく起こり、過ぎてゆく。
我儘だった狭霧は次第に自分を抑えることを覚え、我慢するようになった。
なぜなら自分よりもずっと高貴な生まれの和彦が愚痴ひとつ言わずに質素倹約な生活を過ごし、慣れぬアルバイトにも精を出しているからだ。
『嫌にならないの?』
と聞いても
『愛する狭霧と二人、憧れの巴里で大好きな絵の勉強をしながら暮らせているんだよ。
嫌になる訳がない。幸せすぎて怖いよ』
真っ直ぐな眼差しで答えられた。

『…お前ってやつは…』
狭霧は言葉に詰まる。
和彦の懐の深さと、自分への愛の深さを知るのだ。

やがて、巴里の生活にも薄紙を剥ぐように慣れてゆき、フランス語にも不自由しなくなってきた。
学校の学年も上がり、気がつけば巴里に来てから二度目のクリスマスを迎えようとしていた。
二人は相変わらず仲が良く、幸せだった。
…そこで和彦は一大決心をした。
渡仏し二年が経ったのを機に、和彦は日本の両親に手紙を書いたのだ。

『僕はもう日本には帰りません。
狭霧と二人、巴里で生きてゆきます。
頂いたお金は、毎月少しずつお返しいたします。
…お父様、お母様、親不孝をお許し下さい』
折り返し、和彦の母から混乱し、悲嘆に暮れた手紙が届いた。

『何を言っているのです。
お父様は私が時間を掛けてようやく説得したのですよ。
駆け落ちではなく、留学だと思うことにするとお父様は渋々認めてくださったのですよ。
お願いだから狭霧さんとはお別れして帰国なさい。
…貴方は、狭霧さんに騙されているのですよ』

穏和な和彦がこの一文に初めて怒りを激らせた。
『狭霧は何も悪くありません。
彼を悪くいうなら、お母様には二度と手紙を書きません』
抗議の手紙を返信し、度重なる手紙にも彼は二度と返信をしなかった。





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