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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第2章 狭霧の告白
…クリスマスイブの朝、狭霧にカフェ・オ・レを煎れながら、少し困ったように和彦が切り出した。
『今夜、帰りが少し遅くなる』
…アルバイト先のバールで、夜のシフトの学生が急に辞めてしまい、和彦に代わりに出勤して欲しいと店のオーナー自らアパルトマンに頼みに来たのだそうだ。

『イブだし、狭霧とゆっくり家でディナーするのを楽しみにしていたのに。
ごめんね。
なるべく早く上がらせてもらうから』

平謝りする和彦に、狭霧はあっさり頷いた。
『気にするな。
俺も夕方までモデルのバイトが入った。
だから夜食でもゆっくり食べよう』

和彦が心配そうに眉を寄せる。
『モデルのバイト?
…ヌードじゃないよね?』

狭霧は吹き出した。
『馬鹿。何言ってるんだ。
教授の知人の画家のバイトだから、心配するな』
…本当はセミヌードらしいことは和彦には内緒だ。
その画家から、びっくりするくらい破格のバイト代を提示され、即承諾していた。
…なぜならば、和彦に上質なキャンバスと油絵具、そして新しい絵筆をクリスマスプレゼントとして贈りたかったのだ。

もうすぐ学校内のコンクールがある。
それに入賞すれば、ルーブルに展示される権利を獲得できる。
和彦の絵が、たくさんの人々や高名な美術評論家や画廊主の眼に触れるチャンスだった。
…和彦の絵は本当に美しくて詩情があって素晴らしいからな…。

まだ不安そうな和彦の頬を突っつく。
『何も心配するな。
…俺は先に帰って待ってるから』

和彦は嬉しそうに微笑んだ。
『ありがとう、狭霧。
じゃあ、あとでね』

…先に出ようとする狭霧の手をふっと握りしめ、和彦は優しい声で告げた。

『…狭霧。愛しているよ…。
ずっと、君だけだ…』

…俺も愛している…。
そう唇まで出かかったけれど、ふと思い出す。
…今夜はイブだ。
晩にお祝いする時に言ってやろう。
プレゼントを渡しながら…。
和彦の驚く貌が眼に浮かぶ。

だから、和彦の腕を引き寄せ、微笑んだ。
『返事はあとのお楽しみだ』
『…狭霧…』
名残惜しそうに何か言いたげな和彦に、甘い口づけを送ってやる。

『…バイト、気をつけろよ。
夜の客はガラが悪いからな』
ウィンクをして、慌ただしくアパルトマンを飛び出した。

…どうせ、夜には二人きりでゆっくり過ごせる。
狭霧は楽しげに微笑いながら、階段を駆け降りた。




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