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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第2章 狭霧の告白
『うるさい。聞きたくない。
俺は…お前と生きるんだから…!ずっと…ずっとだ!』
…なんだよ、そんな遺言みたいな…!
狭霧は身震いする。
本当に、和彦は死んでしまうのだろうか。
いや、悪夢だ。これは悪夢なんだ。
頼むから。
頼むから早く醒めてくれ。

『俺は、お前と幸せに生きるんだから…!』
泣き喚く狭霧の貌に、和彦が優しく手を伸ばす。

『…約束して…。
幸せに…なる…て…』
その眼差しには、拒むことを決して許さぬ強い意志の光があった。
『…分かったよ…。
約束するから…少し黙れ…』

和彦は微かに微笑み、首を振る。
少し照れたように囁く。

『…キスして…狭霧…』

和彦の血塗れの身体を強く抱く。
…和彦が、遠くに連れ去られないように。

『何回だって、してやるよ…』
自分の体温を生命を分け与えるような、祈りと愛の口づけをする。
…神様…神様…神様…!
和彦を、連れて行かないでください…!
必死に祈りながら、長い長いキスをする。

…やがて、そっと口唇が離れた瞬間…

『…ありがとう…。
…狭霧…愛している…ずっと…』

その優しい笑顔のまま…
和彦の瞼は、永遠に閉じられたのだ。


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