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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第3章 新たなる道の前で
手紙を握りしめ、狭霧は啜り哭く。

「…あんたは…もう…何回俺を泣かせたら気が済むんだよ…」
肩を震わせ泣き続ける狭霧を、伯爵がそっと抱く。
…夜間飛行の薫りに、優しく包まれる。
「…良い弟さんだね…。
君は幸せだ…」
狭霧は子どものように伯爵の胸で泣き続ける。
「…ユキは…すごくいい子なんだ…」
「そうか…。自慢の弟さんだね」
「貌だって…すごく綺麗で可愛くて…」
「君に似たんだな。美形兄弟だ。
いつか会わせてくれ」

涙に濡れた眼を上げると、彫像のように整った貌が微笑んでいた。
「…俺なんかを…まだ探してくれて…慕ってくれて…実の母親を亡くしたのに…」
「…弟さんは君を愛しているのだよ。
君は弟さんを安心させてあげる義務がある」

差し出された白い絹のチーフで音を立てて鼻をかむ。
「…でも…俺は…もう…」
…はっきり言ってこれからどうしたら良いか分からない。
上海には行きたくない。
これ以上、父親に迷惑を掛けたくない。
けれど、ここ巴里で、ひとりで、一体何ができるのか…。
日本人コミュニティは狭い。
あのような事件の渦中にあった狭霧を人々は忌み嫌い、避けるだろう。
絵しか描いて来なかった自分に、フランス人に混じってロクな職に就けるとは思わない。
…第一、和彦のいない巴里で、今更そんな気力も湧かない…。

「…狭霧くん。
ひとつ提案なのだが」
伯爵が真っ直ぐに狭霧を見つめながら切り出した。

「私のヴァレット(従者)にならないか?」




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