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自分の為のBL
第5章 降り口は、進行方向左側。
「うーん…それは無理。もうこうなったら離さない。」

「え…何言って……?」

「言葉の通り。それに、流石に後ろ見る勇気無いわ。」


それは同感かもしれない。離して貰った所で、時既に遅し。皆の好奇の目に晒されているであろう事は変わらないのなら、抱え込まれたまま、何も見えない方が良いのかもしれない。

いや、そうなのか?
抱かれたままで居るのはそれはそれでどうなんだ…と、俯いた時


「あ、」

足元にカバーの掛かった本が落ちているのに気付いた。

いつも中身が気になっていた、彼の本だ。




俺の声で、一緒に下を見た彼も気付いたらしい。


「ああ、慌ててたから…」

拾った方が良いのか?と思うも、回された腕の力が弛む事はなく、拾わせるつもりも自分で拾うつもりも毛頭無いようだ。


「次の駅で降りるから。その時拾う。そのままで良い。」


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