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春雷に君
第3章 思惑どおり
電話をかけると3コールで市崎くんは出た。
「もしもし?」
「……藤崎です」
「うん。名前が画面に表示されたから、わかってるよ」
「あ……そっか」
「どうしたの?」
「えっと……その……」
口をもごもごさせて、なかなか話を切り出せずにいると
「今日の予定は終わったの?」
市崎くんが聞いてきてドキリとする。
「う、うん。予定より早く終わって……」
時刻は21時前。
早く終わって……なんかより、もっとマシな理由を考えるべきだったか。
「ふぅん。……で、今どこにいるの? 周りが少しうるさいけど」
「駅にいる……〇〇駅」
「……えっ、俺んちの近くの〇〇駅!?」
「うん、そう。市崎くん……今から会える?」
勇気をふりしぼって口にする。
だけど、市崎くんは黙ってしまって何も言ってくれなくて。
ごくっと自分ののどが鳴る音がやけに大きく感じた。
「……ごめん、急すぎたよね。やっぱり――」
「いや、平気。すぐ迎えに行くから待ってて」
「え……いいの?」
「もちろん。すぐ連絡してって言ったの俺だし。たぶん5分くらいで行けるから、安全なところにいて。わかった? わかったら電話切るよ」
「うん、わかった。待ってます」
電話が切れる前、市崎くんがふっと笑った気がした。
スマホを見つめながら、安全なところってどこ? となったけど、駅員がいるだろう改札口付近なら安全かなと思い、歩いていく。
週末の夜の駅はそれなりに人が多い。
疲れた顔で駅をあとにする人、これからどこかへ向かおうと改札を通る人、誰かと待ち合わせしているのかスマホを見たり辺りを見回したりキョロキョロしている人、退屈そうに立っている人、そういう人に声をかけている人。
――私は、どう見えてるんだろう。
今から市崎くんと会って、おそらく抱かれる。
それを期待してショーツを濡らしているなんて思いもしないだろうな……なんて平然とした顔で考えていると、スマホが震えた。
市崎くんからの着信だ。