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春雷に君
第4章 清算
翌日の20時前。
駅前で待ってるとAくんがやってきた。
昼過ぎに『晩ごはんいっしょに食べない?』と改めてメールが届き、まぁホテルに直行するよりはいいか。と了承したから、合流するとすぐAくんの行きつけらしい居酒屋へ連れて行かれた。
一杯目は互いにウーロン茶を頼み、お通しがきたところで「話したいことあって」とAくんが切り出す。
「実は……彼女ができまして」
「えっ!?」
飲んでいたウーロン茶を吹き出しそうになると苦笑しながらAくんがおしぼりを渡してくれる。
「ありがと……いつから?」
「Mちゃんと会ったの……二週間前とかだよね。そのあと会社の同期の子から告白されて。前から少しいいなと思ってたから、落ちつくのもありかなって……」
――まじか……なんてタイミング。
「……実は、私も気になる人ができて……今日はそれを話したくて連絡したの」
「あ、まじで? あー……じゃあ、この関係も終わりってことでいいのかな」
「うん……終わりにしよう。今まで、ありがとう」
「いや、俺こそありがとう。楽しかったよ」
互いにスッキリした顔はしてるものの、なんとなく気まずさもあってウーロン茶を飲み干してしまった。
「何か、頼む?」
メニュー表を渡してくれるAくんに手を振る。
「ううん。話したいこと話せたし、もう帰ろうかなって。二人でごはんなんて、Aくんの彼女にも悪いし」
「あ……やっぱりそう?」
焦ったように笑うAくんにうなずいてみせると、スマホを取り出してなにやら操作している。
そしてすぐに画面を見せてきた。
「Mちゃんのメルアド削除した。捨てアドレスでも、連絡先を知ってることに変わりないし、残してたら彼女もいい気しないよな」
「そうだね。私も削除するね」
スマホからAくんのアドレスを削除する。
これで、本当に終わりだ。
「彼女さんとお幸せに」
「うん。Mちゃんもうまくいくといいね」
微笑んでくれるAくんに代金を渡して居酒屋をあとにする。
時刻は21時前。
意外と緊張していたのか、お酒は飲んでいないのに顔が火照っている。
夜風が気持ちよくて、昨日会ったばかりなのに市崎くんに会いたくなった。