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春雷に君
第5章 春雷
ポツポツと雨が降ってきて、反射的に手のひらで確認すると雨の中に雪っぽいのも混じっていた。
「あ……降ってきたね。これ、ひょうかな」
藤崎も同じように手のひらで確認する。
「ひょう? あられ、じゃなくて?」
「うん。これくらいの小さい粒だとひょうで、大きくなると、あられだったかな? たぶん」
「へぇ、そうなんだ。……藤崎とさ、再会した日もこんな天気だったよね。覚えてる?」
俺の言葉に、藤崎は宙を見て考える。
「ああ、確かにそうだった。よく覚えてるね」
――君とのことなら、覚えてる。
「……俺たちが初めて話した日も、こんな天気だった。藤崎は覚えてないだろうけど」
「え……うん。ごめん、覚えてない。初めてっていうと……高2の頃?」
中学も同じだけど一度も同じクラスになったこともないし、話したこともない。
俺が一方的に藤崎を知っていただけ。
再会したあの日、ラブホテルで話したときの様子から、同じ中学ってことを藤崎は知らなかったみたいだし。
「うん、同じクラスになったのは高2だね。でも、初めて話したのは高1の春」
地元から少し離れた高校を選んだ。
中学のやつなんてほぼいないだろうと思ってた矢先、藤崎と会った。
「高1? うーん……」
首をかしげる藤崎の手を引いてエントランスへ向かい、エレベーターに乗り込む。
「あの日、藤崎は上級生から告白されてた」
「……えっ!?」
エレベーターを降りて部屋へ向かう。
「ちょっと、待って。高1の春で、上級生から告白? ってことは……」
鍵を開けて、やや混乱気味の藤崎の手を掴んで玄関へ入る。
「最初は普通に断ってたよね。それでも上級生は諦めが悪いのかしつこくて、たまたまその場に居合わせて空気になろうとしてた俺も、さすがに仲介しようかと思ってたところで」
「いい、いい! それ以上は言わなくていいからっ!」
両手で俺の口を塞ごうとする藤崎。
その手を掴んで藤崎の体を玄関の壁に追いやる。