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春雷に君
第1章 どうかしている
化粧を落として軽くシャワーを浴びる。
10分もかからずに戻ると、市崎くんはキョトン顔で私を見た。
「……あれ。早かったね」
「うん。簡単に済ませたから」
「そっか。水飲む? ちょうど出したとこで冷たいよ」
「うん、飲みたい。ありがとう」
受け取ってのどに流し込む。
水の冷たさで体の中までスッキリする。
「俺も飲みたい。もらっていい?」
「う、うん。どーぞ……」
蓋を閉めようとしていたペットボトルを市崎くんへ渡すと、ゴクゴクと喉仏を上下させて勢いよく飲み干してしまった。
「……いい飲みっぷり」
「ふぅー……何か無性にのどかわいちゃって。……緊張してるせいかな」
「緊張?」
「うん。藤崎に聞きたいことあって」
「聞きたいこと? なに?」
「さっき……いっしょにいた男って、彼氏?」
――え。
ずっと愛想のいい表情をしていた市崎くんが急に真面目な表情をしてじっと見つめてくる。
「何で……そんなこと聞くの?」
彼氏ではなく、セフレなの。なんて言えないし、どう、ごまかそうか考えていると
「もしかして、彼氏じゃなくて、セフレとか?」
「!? ……ゴホッゴホッ……」
見事に言い当てられてあからさまに動揺してしまった。
そんな私を見て、へぇ……とつぶやきながら市崎くんは距離をつめてくる。
「あの男、一人だけ? 他にもいるの?」
「いっ、市崎くんには関係な――」
「いいから答えて」
急に声のトーンを落とした市崎くんにびくりとした。
市崎くんには関係ないし、どうして言わなきゃいけないの。そう思いつつも口が開いてしまう。
「……あと一人……」
「ふーん。二人もいるんだ。どうして? 一人じゃ満足できないの?」
またもや言い当てられた恥ずかしさで、かぁぁぁ! と顔が熱くなる。
「彼氏を作る気は?」
「……ない」
「じゃあ、セフレをもう一人増やす気は?」
「……どういう……意味?」
意味がわからずに首をかしげると、市崎くんは自分の顔を指さす。
「俺を、藤崎のセフレにしてくれない?」
「……は、い?」
耳を疑いながら、私はただただ呆然と市崎くんを見つめていた。