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春雷に君
第1章 どうかしている
セフレが二人いる私もどうかしているが、市崎くんもどうかしている。
10年以上ぶりに再会したばかりの同級生、それもほぼ関わりのなかったやつと突然セフレ関係になりたいなんて、一体どういうことなのか。
頭の中でクエスチョンマークが飛び回る。
「……ざき、なぁ、藤崎? 聞いてる?」
「あっ、ごめん。聞いてなかった」
ハッとして謝ると市崎くんはフフッと笑う。
「セフレの二人や三人、変わらないでしょ? って言ったんだけど」
「ええ……変わらなくは……」
「藤崎がセフレに求める条件って何?」
――条件……えええ、言いたくない……!
「あ……相性とか」
「……それだけ?」
「それだけじゃ……ないけど……」
ゴニョゴニョと声が小さくなっていくと、市崎くんは何かを考えながら唇と顎のあいだをさする。
その仕草を見て、ムラッとしてしまう。
そう――、
私にセフレが二人もいる理由はこれだ。
20代半ばまでそれなりの性欲しか持ちあわせていなかったが、20代後半に突入したとたん性欲が倍増した。
そのときに付き合っていた彼は10歳年上で、体力的にも精神的にも私の増した性欲に付き合いきれなくなったようで、しばらくして彼から別れを告げられた。
それからは出会い系サイトやアプリで気が合った人と幾度か会ったりしていたけれど、その人が実は既婚者だと発覚してから会うのをやめて。
それならと堂々と「セフレ募集」をして知り合ったのがAくんとEくんの二人。
持続力のあるAくんと、テクニシャンなEくんによって私の性欲はなんとか満たされている。
難点を挙げるとすれば……
Aくんは持続力はあるけどテクニックはなく、逆にEくんはテクニックはあるけど持続力はない、というところ。
どちらかと会う日は、どちらかを我慢しなくてはならない。唯一、残念なのはそれくらい。
「その二人とそれぞれ会って、しっかり満足できてるの?」
思考を見透かしたようなタイミングで口を開いた市崎くんにドキッとする。
「満足できてないから、二人なんじゃないの?」
「それは……」
――そうなんだけど。