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花の香りに酔う如く
第13章 カサブランカに惑う①〜沙羅

自分からキスをして、誘ってみたけど、
「朝、早いからね?
おやすみ」と額にキスを返されて、
背中を向けて眠ってしまう律さんを見て、
涙を流しながら自分も背中を向けた。
恥ずかしさや悔しさ、
もう愛されてないのかと思う気持ちで、
どうにかなりそうだった。
あまり眠れないまま、
朝を迎えて、
律さんがそっと起きる気配に慌てて寝たフリをした。
朝食の支度をして、
殆ど箸が進まないまま早めに仕事に向かった。、
雨の月曜の朝は、
本当に憂鬱な気持ちになってしまう。
お花屋さんが届けてくれたカサブランカを生けながら、
香りを吸い込むと頭痛がしてしまう。
濃いオレンジ色の花粉が開く前に、
丁寧にピンセットで摘んでしまうと、
少し香りが和らいだ気がした。
見た目は花粉がついていた方が色的にインパクトはあるけど、
お洋服についてしまったりすると落ちにくいから、
実家でもいつもこうしていた。
資料を入力したり、
来客にお茶を出したりして、
帰りの電車に乗る前に銀座の百貨店で茶菓と食材を買って帰ろうと思った。
雨は上がっていたので、のんびり一駅分歩いた。
百貨店の手前で、
「あら?
沙羅ちゃん?」と声を掛けられて振り返ると、
ママさんが立っていた。
出勤前らしく、
髪を結い上げて美しい着物姿だった。
「ご無沙汰しております。
披露宴の折は、ありがとうございました」と頭を下げると、
「顔色、悪いわね?
ひょっとして、おめでた?」と言われて、
泣きそうになる。
正確には、
涙が溢れてしまっていた。
「沙羅ちゃん、大丈夫?
お店、すぐそこだから、
ちょっと休んでいきなさいな?」と、
私の手を引いて歩き出す。
そして、三、四年ぶりにお店に足を踏み入れた。
まだ開店前で、
エントランスには大振りの花器にカサブランカがたっぷりと生けられていた。
敢えて花粉が残されているのが妙に色香があり、
香りも強く感じて眩暈がしてしまった。
「朝、早いからね?
おやすみ」と額にキスを返されて、
背中を向けて眠ってしまう律さんを見て、
涙を流しながら自分も背中を向けた。
恥ずかしさや悔しさ、
もう愛されてないのかと思う気持ちで、
どうにかなりそうだった。
あまり眠れないまま、
朝を迎えて、
律さんがそっと起きる気配に慌てて寝たフリをした。
朝食の支度をして、
殆ど箸が進まないまま早めに仕事に向かった。、
雨の月曜の朝は、
本当に憂鬱な気持ちになってしまう。
お花屋さんが届けてくれたカサブランカを生けながら、
香りを吸い込むと頭痛がしてしまう。
濃いオレンジ色の花粉が開く前に、
丁寧にピンセットで摘んでしまうと、
少し香りが和らいだ気がした。
見た目は花粉がついていた方が色的にインパクトはあるけど、
お洋服についてしまったりすると落ちにくいから、
実家でもいつもこうしていた。
資料を入力したり、
来客にお茶を出したりして、
帰りの電車に乗る前に銀座の百貨店で茶菓と食材を買って帰ろうと思った。
雨は上がっていたので、のんびり一駅分歩いた。
百貨店の手前で、
「あら?
沙羅ちゃん?」と声を掛けられて振り返ると、
ママさんが立っていた。
出勤前らしく、
髪を結い上げて美しい着物姿だった。
「ご無沙汰しております。
披露宴の折は、ありがとうございました」と頭を下げると、
「顔色、悪いわね?
ひょっとして、おめでた?」と言われて、
泣きそうになる。
正確には、
涙が溢れてしまっていた。
「沙羅ちゃん、大丈夫?
お店、すぐそこだから、
ちょっと休んでいきなさいな?」と、
私の手を引いて歩き出す。
そして、三、四年ぶりにお店に足を踏み入れた。
まだ開店前で、
エントランスには大振りの花器にカサブランカがたっぷりと生けられていた。
敢えて花粉が残されているのが妙に色香があり、
香りも強く感じて眩暈がしてしまった。

