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花の香りに酔う如く
第14章 カサブランカに惑う②〜律
楽しそうに笑いながら、
母と沙羅ちゃんが部屋に入って来ると、
僕は沙羅ちゃんの手を思わず握ってしまう。



「えっ?
律さん、どうしたの?」と、
沙羅ちゃんが顔を紅くする。


「養子のことは、先の話だけど、
受けようと思うけど、どうかな?」

「私は律さんに従います」と沙羅ちゃんは小さいけどはっきりした声で言う。


「家元の件も、まだまだ先だから、
ひとまず、仕事先に相談してから、
家元見習いって感じで、
稽古の手伝いに来れば?
送り迎えするから」と言うと、
安心したような顔で頷いた。



「でも、律さん、運転、大変じゃない?」

「ラッシュの電車に沙羅ちゃんが乗る方が、
大変だし、心配だよ?
それに、実家の家族や沙羅ちゃんのご家族とも、
たくさん会えるし」と続けると、
沙羅ちゃんは嬉しそうに笑った。



「家元になんて、
とても私では無理だと思いますけど、
お手伝いなら出来ると思います。
東京のお寺でも、
お稽古、やってみようかな?
家元先生、奥様、
どうぞ宜しくお願いします」と頭を下げると、

「やだわ?
家族だけなんだから、
お義父さん、お義母さんで良いのよ?」と、
母が笑った。


「慧お兄様は、いつ、本山にいらっしゃるんです?」と沙羅ちゃんが訊くと、

「来月だよ」と慧兄さんは静かに言った。


「なかなか帰って来れなくなるけど、
律と2人で会いにおいで?」と言われて、
沙羅ちゃんは涙ぐんでいる。


「外国ってわけじゃないから、
いつでも会えるよ?」と、
子供の頃のように、
沙羅ちゃんの頭を優しくポンポンして笑う。


「まあ、子供が出来たら、
なかなか来れないかもしれないけどな」と言われて、
沙羅ちゃんは僕の顔を見て、
耳を紅くしていた。
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