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花の香りに酔う如く
第2章 月下美人の夜②〜律

あれは、確か高校1年の頃だったか、
土曜日だけど補講で登校して帰宅した時のことだった。
少し重い足取りで帰宅して玄関に向かっていたら、
茶室側の小さい玄関から仔犬のように沙羅ちゃんが駆け出してきて、
僕とぶつかってしまった。
小さい沙羅ちゃんの方が、
支えようと思った僕の手をすり抜けて転んでしまった。
「沙羅ちゃん、大丈夫?
怪我、してない?」と言いながら、
大切なモノを扱うようにそっと立たせてあげる。
淡い色合いの花柄のワンピース。
膝の辺りをそっと叩いてあげると、
目にたくさん涙を溜めていて、
僕は驚いてしまった。
「あれ?
泣いてるの?
痛い?」と顔を覗き込んで、
そっと目尻の涙を指先で拭ってあげると、
沙羅ちゃんは無理して僕に微笑みかけようとしてくれた後、
恥ずかしそうに僕の胸に顔を埋めた。
僕の方が恥ずかしくなってしまう。
胸はドキドキしてるし、
ちょっと股間はヤバいことになってる。
僕は腰を引きながら、
なんとか沙羅ちゃんの髪をそっと撫でてみると、
「慧お兄様がね。
修行に行っちゃうって…」と僕を見上げて、
沙羅ちゃんは無理して笑おうとした。
でも、顔が少し歪んで辛そうに見えた。
お茶会の時に待合にしているトコまで手を引いてあげて、
座らせてあげると、
僕は静かな声で言った。
「慧兄さんも僕も、それに空も、
みんな、修行に行くんだよ。
そういう家だからね」
「律お兄様も?
いつ?」
「んー。
大学出てからかな?
でも、高校出たら、
家を出ると思うよ?」
「えっ?
どうして?」
「まあ、色々あるからね?」
そうなんだ。
僕は3人兄弟で、
父さんの兄弟弟子だっていう水野のおじさんの処に、
養子に入ることは、ずっと前から決まっていた。
水野のおじさんの処は、おばさんが亡くなってしまって、
子供が居ないから、
跡継ぎが必要だってことだった。
だから、高校を出たら、
そこから通える大学に行って、
少しずつお寺のことを手伝って、
大学の後、修行に出て、
本格的にお寺のことをすることになっていた。
その分、大学は、
好きなことをやらせてくれることになっていた。
僕はどうせなら最高峰の大学で、
法律の勉強をしようと思っていた。
土曜日だけど補講で登校して帰宅した時のことだった。
少し重い足取りで帰宅して玄関に向かっていたら、
茶室側の小さい玄関から仔犬のように沙羅ちゃんが駆け出してきて、
僕とぶつかってしまった。
小さい沙羅ちゃんの方が、
支えようと思った僕の手をすり抜けて転んでしまった。
「沙羅ちゃん、大丈夫?
怪我、してない?」と言いながら、
大切なモノを扱うようにそっと立たせてあげる。
淡い色合いの花柄のワンピース。
膝の辺りをそっと叩いてあげると、
目にたくさん涙を溜めていて、
僕は驚いてしまった。
「あれ?
泣いてるの?
痛い?」と顔を覗き込んで、
そっと目尻の涙を指先で拭ってあげると、
沙羅ちゃんは無理して僕に微笑みかけようとしてくれた後、
恥ずかしそうに僕の胸に顔を埋めた。
僕の方が恥ずかしくなってしまう。
胸はドキドキしてるし、
ちょっと股間はヤバいことになってる。
僕は腰を引きながら、
なんとか沙羅ちゃんの髪をそっと撫でてみると、
「慧お兄様がね。
修行に行っちゃうって…」と僕を見上げて、
沙羅ちゃんは無理して笑おうとした。
でも、顔が少し歪んで辛そうに見えた。
お茶会の時に待合にしているトコまで手を引いてあげて、
座らせてあげると、
僕は静かな声で言った。
「慧兄さんも僕も、それに空も、
みんな、修行に行くんだよ。
そういう家だからね」
「律お兄様も?
いつ?」
「んー。
大学出てからかな?
でも、高校出たら、
家を出ると思うよ?」
「えっ?
どうして?」
「まあ、色々あるからね?」
そうなんだ。
僕は3人兄弟で、
父さんの兄弟弟子だっていう水野のおじさんの処に、
養子に入ることは、ずっと前から決まっていた。
水野のおじさんの処は、おばさんが亡くなってしまって、
子供が居ないから、
跡継ぎが必要だってことだった。
だから、高校を出たら、
そこから通える大学に行って、
少しずつお寺のことを手伝って、
大学の後、修行に出て、
本格的にお寺のことをすることになっていた。
その分、大学は、
好きなことをやらせてくれることになっていた。
僕はどうせなら最高峰の大学で、
法律の勉強をしようと思っていた。

