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花の香りに酔う如く
第16章 月下美人で授かる②〜律
気まずい沈黙。

そこに、濃厚な月下美人の香りが流れ込んでくる。

目を閉じて、手をギュッと握り締めて、
僕は思い切って言葉を続けた。



「僕だと、沙羅ちゃんを悦ばせてあげられない。
最初は本当に恥ずかしそうにしてて、
震えてる感じだったけど、
凄く良い声で啼くようになってきてたんだよ?
最高に気持ち良いんだ。
こんな月下美人の香りみたいに、
妖艶に花開いてきたっていうのに、
僕、全然役立つで。
それ、沙羅ちゃんのせいじゃないよ。
聖母みたいだとか言い訳だよね?
僕のせい。
AVとかで抜いてたりしたのもいけなかったのかな?
沙羅ちゃんのこと、妄想したりして。
誰か、他のヤツとやってるトコ、
想像した方が勃つなんて。
きっと、頭がおかしくなってるのかも。
このままじゃ、二人目なんかもとても無理。
でも、慧兄さんなら…。
沙羅ちゃん、ずっと兄さんのこと、好きだったし、
兄さんとの子供なら、
自分の子供として育てられるよ?
養子に出すことになってるし」


僕は思っていることを一気に吐き出すように口にした。


沈黙がまた、流れる。



すると、慧兄さんは、
少し辛そうな顔で言った。



「本当に無理だよ。
出来ないんだ」



僕は閉じていた目を開けて慧兄さんを見ると、
慧兄さんは静かに涙を流していた。
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