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花の香りに酔う如く
第2章 月下美人の夜②〜律

それから2年ほどして、慧兄さんが結婚することになった。
おばあちゃんが体調悪くなって、
「早くひ孫を抱きたいから」と口にするようになってたから、
父さんと同じ宗派の寺の娘と結婚するという話だった。
お見合いというより、
もう、話はついている感じだった。
家族での顔合わせで見たお嫁さんになるヒトは、
綺麗だけど、狐みたいな顔で、
冷たい感じに見えた。
でも、どうせ自分もまもなく家を出ることが決まっていたから、
そんなに会うこともないだろうと思っていた。
兄さんも、運命っていうか、
家の宿命だと思って何も言わなかった。
でも、沙羅ちゃんは目に涙を浮かべて、
手を握り締めてその話を聴いていたそうだった。
兄さんに、
「沙羅と結婚してくれるって言ったのに、
嘘つき!!」と言ったそうだ。
兄さんは、
「えっ?
あれ、幼稚園児の頃の話でしょう?」と笑いながら流したと言っていた。
その話を兄さんからも聞かされて、
その後、沙羅ちゃんからも聞かされた。
「沙羅ちゃんは、ずっと兄さんのこと、
好きだったもんね?」と言いながら髪を撫でて、
自分も東京のお寺に行くことを伝えると、
沙羅ちゃんはポロポロ泣きながら、
「律お兄様も遠くに行っちゃうの?」と身体を震わせて泣いた。
「東京なんて、隣なんだから、
いつでも会えるよ?」と背中をぎこちなく撫でると、
「絶対?
約束してくれる?」と言って、
無理矢理、指切りをさせられた。
そうして、僕は大学に進学するタイミングで、
水野という苗字に変わって、
東京のど真ん中のお寺に入った。
沙羅ちゃんは私立の女子校に入り、
空も私立の男子校に入ったから、
空から沙羅ちゃんの話を聞くことも無くなってしまった。
おばあちゃんが体調悪くなって、
「早くひ孫を抱きたいから」と口にするようになってたから、
父さんと同じ宗派の寺の娘と結婚するという話だった。
お見合いというより、
もう、話はついている感じだった。
家族での顔合わせで見たお嫁さんになるヒトは、
綺麗だけど、狐みたいな顔で、
冷たい感じに見えた。
でも、どうせ自分もまもなく家を出ることが決まっていたから、
そんなに会うこともないだろうと思っていた。
兄さんも、運命っていうか、
家の宿命だと思って何も言わなかった。
でも、沙羅ちゃんは目に涙を浮かべて、
手を握り締めてその話を聴いていたそうだった。
兄さんに、
「沙羅と結婚してくれるって言ったのに、
嘘つき!!」と言ったそうだ。
兄さんは、
「えっ?
あれ、幼稚園児の頃の話でしょう?」と笑いながら流したと言っていた。
その話を兄さんからも聞かされて、
その後、沙羅ちゃんからも聞かされた。
「沙羅ちゃんは、ずっと兄さんのこと、
好きだったもんね?」と言いながら髪を撫でて、
自分も東京のお寺に行くことを伝えると、
沙羅ちゃんはポロポロ泣きながら、
「律お兄様も遠くに行っちゃうの?」と身体を震わせて泣いた。
「東京なんて、隣なんだから、
いつでも会えるよ?」と背中をぎこちなく撫でると、
「絶対?
約束してくれる?」と言って、
無理矢理、指切りをさせられた。
そうして、僕は大学に進学するタイミングで、
水野という苗字に変わって、
東京のど真ん中のお寺に入った。
沙羅ちゃんは私立の女子校に入り、
空も私立の男子校に入ったから、
空から沙羅ちゃんの話を聞くことも無くなってしまった。

