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花の香りに酔う如く
第17章 伽羅の香りに包まれて①〜沙羅

その翌日と翌々日の、律さんの実家のお寺でのお稽古は、
どうやって動いていたかもあまり覚えていないほどだったけど、
身体に染み付いた所作で周りの方にはそんなに違和感を覚えさせることはなかったようだった。
お稽古2日目には、
久し振りに慧お兄様が本山から戻ってきた。
少女時代のように、
一緒に茶室に座ってくださって、
生徒さんともお話ししてくださるので、
前日より少し気持ちが楽になるのを感じながら夜までお稽古をした。
最後の生徒さんが帰った後、
茶道具を片付け始めると、
お兄様も手伝ってくれる。
黙々と丁寧に道具を片付けていると、
ふわりと伽羅の香りを感じた。
私はそれを深く吸い込んで、
小さく溜息をついてしまった。
そして、不覚にも涙を流していた。
「ん?
沙羅ちゃん、どうしたの?」と言われて、
言葉も出なかった。
慧お兄様は、
部屋から出て行ってしまうと、
暫くして大ぶりのマグカップを手に戻ってきた。
「玉露や抹茶より、
ココアが良いかなと思って」と言って、
両手にマグカップを持たせてくれると、
「沙羅ちゃん、猫舌だから、
ゆっくり飲むと良いよ。
一人の方が落ち着くなら、
あっちに行ってるね?」と言う。
私は首を振って、
小さい声で、
「一緒に居て欲しいです」と言った。
慧お兄様は私の斜め前に正座をして、
優しい顔で笑った。
どうやって動いていたかもあまり覚えていないほどだったけど、
身体に染み付いた所作で周りの方にはそんなに違和感を覚えさせることはなかったようだった。
お稽古2日目には、
久し振りに慧お兄様が本山から戻ってきた。
少女時代のように、
一緒に茶室に座ってくださって、
生徒さんともお話ししてくださるので、
前日より少し気持ちが楽になるのを感じながら夜までお稽古をした。
最後の生徒さんが帰った後、
茶道具を片付け始めると、
お兄様も手伝ってくれる。
黙々と丁寧に道具を片付けていると、
ふわりと伽羅の香りを感じた。
私はそれを深く吸い込んで、
小さく溜息をついてしまった。
そして、不覚にも涙を流していた。
「ん?
沙羅ちゃん、どうしたの?」と言われて、
言葉も出なかった。
慧お兄様は、
部屋から出て行ってしまうと、
暫くして大ぶりのマグカップを手に戻ってきた。
「玉露や抹茶より、
ココアが良いかなと思って」と言って、
両手にマグカップを持たせてくれると、
「沙羅ちゃん、猫舌だから、
ゆっくり飲むと良いよ。
一人の方が落ち着くなら、
あっちに行ってるね?」と言う。
私は首を振って、
小さい声で、
「一緒に居て欲しいです」と言った。
慧お兄様は私の斜め前に正座をして、
優しい顔で笑った。

