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花の香りに酔う如く
第18章 伽羅の香りに包まれて②〜慧
本当に久し振りに沙羅ちゃんと会った。

実家の小さいお堂の落慶法要の打ち合わせを兼ねて帰省するタイミングと、
沙羅ちゃんが父の代稽古に来る日が偶然重なったからだった。


お母さんになって3年経つのに、
沙羅ちゃんは相変わらず可愛くて清楚なままだった。


律は沙羅ちゃんを実家の寺に送ると、
蜻蛉返りで都内の寺に戻って行ったから、
打ち合わせの合間に久し振りにお茶の稽古の手伝いをしながら、
そっと沙羅ちゃんを見た。


お化粧は殆ど、
いや、多分、全くしていないけど、
瑞々しくて白い肌。

キリリと後ろで髪を纏めた質素な着物姿で、
テキパキと動いたと思うと、
どっしり座って静かに指導する様子が、
本当に清々しくて、眩しかった。


二日間の稽古が終わって、
片付けを手伝いながらふと見ると、
沙羅ちゃんが静かに涙を流していて、動転して、
思わずそっと抱き寄せた。


ごく僅かに薫る伽羅。

沙羅ちゃんの柔らかい身体。



僕は目を閉じて、
沙羅ちゃんに酔いそうになる。




「私なんて、魅力、ない…」と言う沙羅ちゃんは、
誰よりも魅力的だと思ったけど、
上手くそれを言えなかったかもしれない。


どうしたんだろう?
律と何か、あったのかな?



心配しながらも、
慰める言葉を掛けて、
そっと抱き締めて背中を撫でてあげて、
子供の頃のように額にキスをしてあげることしか出来なかった。


おまけに、客間に戻った沙羅ちゃんは、
貧血を起こしたように倒れ込んでしまって、
その夜はそのまま、沙羅ちゃんの実家に蓮くんと行ってしまった。



そして、その日、
律からびっくりするようなことを言われてしまった。
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