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花の香りに酔う如く
第18章 伽羅の香りに包まれて②〜慧
京都に帰る日、支度をしていたら、
沙羅ちゃんが茶室に入って行くのが見えた。

まだ青褪めた顔をしていたけど、
シンプルな紺色のワンピース姿の沙羅ちゃんは、
なんだか学生のようだった。


訊くと、生理痛だったそうで、
心配してしまった。

母も昔は、時々寝込むほど具合が悪かったのを思い出した。



そして、不安げで儚い雰囲気の沙羅ちゃんに、
僕はくちづけをしてしまった。


そっと抱き締めて、
額や頬にした後、
唇を重ねた。


沙羅ちゃんは嫌がる素振りも見せないし、
少し驚いた後、
静かに僕に身を任せてくれた。


息が苦しくなったのか、
少し唇が開いたので、
そっと舌を滑り込ませて柔らかい沙羅ちゃんの舌を探ると、
おずおずと絡めてくれる。



遠くで時計の鳴る音がして、
驚いて身体を硬くして、
そっと離れた。


沙羅ちゃんの少しトロンとした顔を見て、
僕は身体の奥で、欲望の小さい塊を感じたけど、
快活に話をして、
沙羅ちゃんから離れた。


沙羅ちゃんは、律の奥さん。
何度もそう言い聞かせた。


律と一緒の時にしか、
会わないようにしないと、
どうにかしてしまいそうで、
自分が怖くなった。



そして、そんな気持ちを抱いたことを、
後日、電話で律にだけは話しておいた。



律は考え込むような沈黙の後、
何かを言いかけてやめた。

どんな言葉を呑み込んだんだろう?

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