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花の香りに酔う如く
第4章 モッコウバラのキス②〜律

「律はもう、女と寝たこと、あるのか?」
と早めの夕食の席で水野住職に言われて、
飲んでいたお茶でむせてしまって咳き込んでしまった。
その訊き方が、
まるで、至極当たり前のことを訊くような感じで、
咳が落ち着いてから、
「いいえ」と素直に答えてしまった。
「なんだ。
お前の高校は、モテる学校だっただろうに。
ひょっとして、オトコの方が好きだとか?」とサラリと訊かれて、
更に動揺してしまう。
質問の意味が判らない。
「お前、東大生だし、
ここの寺の息子になって、
変なオンナに引っ掛かるといけないからな」と言うと、
「ちょっと出掛けるぞ」と言った。
「ああ。
そうだな。
入学式の時のスーツを着なさい。
あ、車は要らない。
タクシー呼びなさい」と言われて、
銀座のクラブという所に連れて行かれた。
「乾杯くらいは飲みなさい」と言われて、
恐る恐る初めてウィスキーの水割りを飲んで、
ぼんやり周りを見る。
派手なドレスを着た女の人達は、
背が高いのにハイヒールを履いて、
同じような化粧と髪型で、
服の色でしか判別出来ない。
年齢すら、判らない。
小柄の着物姿の女の人が、
「ママ」って呼ばれてるから、
そこの店主なんだろう。
柔らかい笑顔で、
少し沙羅ちゃんに似ているような気がした。
正確に言うと、
沙羅ちゃんのお母様に似てるのかもしれない。
もう1人、長身で着物の人が居て、
そっちは名前で呼ばれているから、
「ママの右腕」なのかもしれない。
なんか、極道の女って感じで凄みがある。
住職は、
「律、どのコが好みかな?」と耳元で言うので、
「みんなおんなじような顔で、
見分けがつかなくて…」と言うと、
楽しそうに大笑いする。
「強いて言えば…。
あの、着物の小さいヒトです。
気配りしてる感じで、
優しそうで…」
「なんだ。
律は随分と歳上好みなんだな?」と笑って、
その人を席に呼んだ。
そして、
「こいつ、私の息子なんだよ」と紹介した後、
ママさんの耳元で何かを囁いていた。
ママさんは僕を見て、
「あら?
まあ…」と言って、
目をきらりと光らせたような気がした。
と早めの夕食の席で水野住職に言われて、
飲んでいたお茶でむせてしまって咳き込んでしまった。
その訊き方が、
まるで、至極当たり前のことを訊くような感じで、
咳が落ち着いてから、
「いいえ」と素直に答えてしまった。
「なんだ。
お前の高校は、モテる学校だっただろうに。
ひょっとして、オトコの方が好きだとか?」とサラリと訊かれて、
更に動揺してしまう。
質問の意味が判らない。
「お前、東大生だし、
ここの寺の息子になって、
変なオンナに引っ掛かるといけないからな」と言うと、
「ちょっと出掛けるぞ」と言った。
「ああ。
そうだな。
入学式の時のスーツを着なさい。
あ、車は要らない。
タクシー呼びなさい」と言われて、
銀座のクラブという所に連れて行かれた。
「乾杯くらいは飲みなさい」と言われて、
恐る恐る初めてウィスキーの水割りを飲んで、
ぼんやり周りを見る。
派手なドレスを着た女の人達は、
背が高いのにハイヒールを履いて、
同じような化粧と髪型で、
服の色でしか判別出来ない。
年齢すら、判らない。
小柄の着物姿の女の人が、
「ママ」って呼ばれてるから、
そこの店主なんだろう。
柔らかい笑顔で、
少し沙羅ちゃんに似ているような気がした。
正確に言うと、
沙羅ちゃんのお母様に似てるのかもしれない。
もう1人、長身で着物の人が居て、
そっちは名前で呼ばれているから、
「ママの右腕」なのかもしれない。
なんか、極道の女って感じで凄みがある。
住職は、
「律、どのコが好みかな?」と耳元で言うので、
「みんなおんなじような顔で、
見分けがつかなくて…」と言うと、
楽しそうに大笑いする。
「強いて言えば…。
あの、着物の小さいヒトです。
気配りしてる感じで、
優しそうで…」
「なんだ。
律は随分と歳上好みなんだな?」と笑って、
その人を席に呼んだ。
そして、
「こいつ、私の息子なんだよ」と紹介した後、
ママさんの耳元で何かを囁いていた。
ママさんは僕を見て、
「あら?
まあ…」と言って、
目をきらりと光らせたような気がした。

