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花の香りに酔う如く
第5章 クチナシの誘惑①〜沙羅
梅雨に入る。

毎年、この時期は偏頭痛が辛かったりして、
更に生理痛で動けないくらい具合が悪いのが重なると最悪だった。


ここのお寺に寄宿して以来、初めてな位一番具合が悪くて、
朝も起きれないでいた。


控えめなノックにも気が付かなくて、
ミノムシのように丸まっていると、
お兄様が部屋の入り口のドアの処に立っていた。


「具合悪いの?
部屋に入っても良いかな?
大丈夫?
救急車、呼ぶ?」と、
青褪めた顔で言うので、
私は何とか笑いかけようとしたけど、
多分、物凄く不細工な顔になっていたと思う。


「あのね。
えっと…生理痛なんです」

「えっ?」

「月に1回、やってくるんですけど、
交互に物凄く痛いことが多くて、
今月は、死にそうなんです」

「薬とかは?」

「飲んだけど…。
効かないくらい、痛くて…」

「えっと。
なにか、出来ること、ある?」

「大丈夫です。
今日は、大学、お休みして、
寝てます」

「朝ご飯も食べれない?
お粥、ここに持ってこようか?
待ってて?」
と言って、
お兄様は慌てて部屋を出て行ってしまう。


暫くして、
黒塗りのまあるいお椀にお粥と梅干しと焙じ茶を持ってきてくれた。


私はベッドになんとか寄り掛かって座って、
一口ずつ、食べてみたけど、
とても全部は食べれなかった。


「無理して食べなくても良いよ。
胃に何か入ったから、
薬、飲もうか?
何処にあるの?」と言って、
私の机の引き出しから薬を取り出して貰って飲んだ。


「ごめん。
周りが男ばかりだったから、
そういうの、全然気が付かなくて。
いつもそんなに辛かったんだ。
病院とかに行った方が良いんじゃない?」

「これ、病気じゃないから」

「あ。
いつも部屋のシャワーだよね?
本当は湯船にちゃんと浸かって、
お腹、温めた方が良いんじゃない?
下のお風呂、使えば良いのに」

「なんか、恥ずかしくて。
どの時間帯が大丈夫なのか、
良くわからなくて…」

「いつでも大丈夫だよ。
気が付かなくてごめんね?
住職にも言っておくよ」

「やだ。
生理痛のこと、恥ずかしいから、
言わないでくださいね?
お風呂は、使わせて貰います。
うっ。
お腹、痛い…」と言って、
また横になると、
お兄様は心配そうに背中を撫でてくれた。

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