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花の香りに酔う如く
第6章 クチナシの誘惑②〜律
大学に迎えに行く帰りに食材を一緒に買い物をして、
帰宅してから二人で常備菜や夕食の支度をすることもあった。

自分も、大事にされてる長男、
甘やかされて何もしない三男に挟まれていたこともあって、
結構母親の手伝いがてら、料理は結構やっていたけど、
沙羅ちゃんは僕以上に料理が上手で、
正直、驚いてしまった。


訊くと、懐石料理やお節料理も普通に作っていたというし、
ケーキや洋風の料理も好きだという。

小さい身体でちょこまかと動いては、
楽しそうに複数の料理を手際良く作ってるのを見て、
感心してしまった。


男所帯で、
質素な食生活だったから、
住職が嬉しそうに、
「沙羅ちゃんが来てからは、
食卓がカラフルになったな。
でも、家事はそんなにしないでくれ。
勉強に障るといけないからな。
なんなら、家政婦でも入れようか?」と、
他人を入れるのを嫌っていた住職が、
沙羅ちゃんを気遣って、そんなことを言い始めるほどだった。


「あら。
本堂の雑巾掛けとかはしてないし、
家電がたくさんあるから、
大丈夫ですよ?」と沙羅ちゃんはニコニコして言っていた。



なんか、新婚さんみたいだなと思って、
実はかなり照れ臭くて、
いつもぶっきらぼうな席を立ったりしていた。


そして、沙羅ちゃんがここに来てから、
何か、不自然で、
何か、忘れているような気がしていた。
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